本日はGrainからの土地収奪に関する日本語訳が完成したので掲載いたします。
原文にはかなり詳細なデータも掲載しておりますので下記URLの原文と合わせてご一読ください。

原典URL https://www.grain.org/article/entries/5958-failed-farmland-deals-a-growing-legacy-of-disaster-and-pain

作成:GRAIN
作成日: 2018年6月6日


「このプロジェクトはすでに「失敗」に終わったように見えますが、企業投資を呼び込むだけでなく、土地が人びとに返還されるよう要求をしていく、また圧力をかけ続けていく必要があります。」

2017年は土地収奪から土地を守る人びとにとって史上最悪の年の一つとなりました。[2]また、土地収奪を目論んでいる人びとにとっても非常に悪い年でありました。かなりの数の大きな農地取引が失敗し、過去数年間のうちに期待はずれに終わったプロジェクトの件数が増加しました。

土地収奪の影響を受けたコミュニティにとってこれは朗報ですが、その多くはいまだに取引の影響への対処に追われ、引き続き土地を取り戻すための苦難に直面しています。

私たちはプロジェクトを中断させることによってある一定の成果をあげたかもしれませんが、プロジェクトが失敗した際に生じる問題に対処するという緊急の課題があります。[3]

要点

• GRAINは、2007年から2017年の間に、計画通りに進行しなかった、少なくとも135件の食料作物生産に関わる農地取引を記録しています。
• これらの取引は1,750万ヘクタールに及び、ウルグアイの国土面積とほぼ同じ面積です。
• アグリビジネス自体は失敗に終わりましたが、これらの土地がいまだコミュニティに返還されていないことから、土地収奪が失敗に終わったとはいえません。
• より効果的なリスク管理と強力な責任規範が必要とされる一方で、本当の挑戦は土地をコミュニティに返還することです。

この目標が達成されるまで、私たちは休むことはできません。

莫大な数の農地取引が失敗に終わったことからもわかるように、このような農地取引は決して許されないことです。つまり、アグリビジネスへの扉を開くのではなく、地域社会による食の生産を支援するための政策やイニシアチブへの投資が必要不可欠です。

私たちが目にしているもの
GRAINが食品と農業分野における土地取引のデータベースを最後に更新した際に中止・放置・消滅、または失敗したと思われる1,300万ヘクタールに及ぶ125件もの取引が存在しているのを確認しました。それは2016年のことでした。
私たちは2017年に発表された、失敗に終わった農地取引の数とそれらの取引の重要性に驚愕しました。その多くは世界的に周知されたもので、新たな試みを取り入れたアグリビジネスの象徴的なプロジェクトだったからです。たとえば、次の事例があげられます。

・インドの農業関連の投資家Karuturiはエチオピアから撤退すると宣言しました。
・フランス政府は、G8栄養・食料安全保障のためのニューアライアンス(NAFSAN)から脱退することを発表しました。
・ドデールで米を生産するために10,000ヘクタールの譲渡を約束されていたモロッコの3番目に富裕な億万長者であるアナス・セフリオー(Anas Sefrioui)は、セネガルの大統領から取引は終了したと告げられました。

我々はこのような現状を単純に喜ぶべきなのがどうか疑問に思いましたが、まずはいま何が起きているのか、それが何を意味するのかを検証することにしました。この検証の過程で、我々は同盟団体とパートナーに意見を求めました。 [4]利用可能なデータを見ると、いくつかの点に関して指摘することができます:[5]

• 2007年から2017年までの10年間に私たちは、何らかの理由で失敗に終わった食料作物生産を目的とした135の土地取引に関する信頼できる情報を得ています(図1参照)。
• これらの取引は1750万ヘクタールに及び、ウルグアイとほぼ同等の土地を占めています。
• 農業生産のための土地収奪の失敗は2010年にピークに達しましたが、2015年以降再び増加しています。
• 投資家目線という観点からは、地理的・特定の共通性は発見できませんでした。
• 失敗は、実際には実現していない(農業生産が行われなかった)取引から、失敗したプロジェクトに至るまで、時間の経過と共に明らかにシフトしています(図2参照)。
「失敗」という言葉の下で一括りにするということは、それとは異なる現実を覆い隠してしまいます。カメルーンのHeraklesで起こった事例では、政府が許可または譲歩を取り下げ、または大幅に縮小したために投資家は土地を失いました。他の事例では、セネガルでイタリアのタンピエリ・グループのSenhuileプロジェクトなどのように、資金が枯渇したりするなど、プロジェクトの進行を阻害するような問題に直面するなどしたために、この投資家は事業から撤退しました。
さらに他の事例では、このようなプロジェクトが現地住民によって妨害され、停止に追い込まれるなどして失敗した事例もあります。これら以外の事例としては、投資家の期待した成果を満たすことができなかったことから失敗とされた事例もあります。 さらに他のケースでは、投資家が破産したという事例もあります。
強調しなくてはいけない非常に重要な側面の1つとして、土地が元のコミュニティに戻ったという意味合いにおいて、これらは土地取引に失敗したということではないということです。
それどころか、多くの場合、プロジェクトはしばしば他の投資家や州に引き継がれます。 このような意味で土地収奪自体は失敗していないのです。
なぜ多くの農地取引が失敗しているのか?


セネガルで進められた世界銀行のPDIDASプロジェクトのケースでは、農地取引やプロジェクトの近年の失敗についての重要な考察を行うことできます。PDIDASという略語は、「包括的で持続可能なアグリビジネス開発プロジェクト」の略語です。このプロジェクトは、2014年に世界銀行から8,000万ドルの融資を受け、5年間の予定で開始されました。
この構想は、国の経済の中心となっている小規模な農家や放牧者を排除することなく、セネガルの大規模な商業的輸出志向の農業経営を推進することでありました。そして、外国人投資家は、国内投資家と同様に企業と周辺の農家との間で半分に分割された土地に利用することになっていました。このようにして、プロジェクト(道路、灌漑、電気、フェンスなど)のために開発されたインフラは、全ての人びとが利用できる予定でした。
本来このプロジェクトは、家族農業と並行して大きなビジネスを農業開発のパラレルトラックとして確立することを目標としていました。これには小規模農家なくして農業開発をすべきでないという激しい抵抗運動の機運が高まっていたという背景があります。

投資家は自国の輸出用作物を自由に生産したり、小規模農家に生産を委託したりすることができます。この事業の過程では、投資家と地域社会に土地をリースすることを可能にするためにセネガルの土地法の特定の要素に抵触しないよう、それを変更することもなく、土地改革プロセスのための新たな「モデル」を提供していました。
しかし、これらのほとんどが理論上でのことでした。
実際には、プロジェクトは大失敗であったとセネガルのグループは述べました。 20,000ヘクタールのプロジェクト・エリアの市民活動家アルド・ソウ(Ardo Sow)氏によれば、2018年の早い時点で200ヘクタール(パイロット事業サイト)しか開発されていませんでした。なぜでしょうか? 地元の市長は、このプロジェクトは計画実施における厳格さや明快さに欠け、そして官僚主義に囚われていたと発言しました。このプロジェクトは「採算が取れない」と彼らは嘆きました。 「機能不全」という人もいます。 世界銀行は、2019年に事業が終了しても、それほど多くの成果を残すことができないであろうことをすでに把握していました。 [7]

しかし、Sowが指摘しているように、セネガルの納税者は世界銀行からの融資を返済する必要がありますPDIDASの根本的な欠陥は、コンソーシアム・アグリビジネスを戦略として推進するための全体的な計画が地域社会を置き去りにして投資家のために働くことに向けられていたことにあります。このアイデアは、地元農民の農業を強化するのではなく、アグリビジネスを前進させることにありました。つまり、隠された目的は、世代を超えてその土地に暮らす、また土地をアグリビジネスに譲り渡すのを嫌うコミュニティとの和平を内在化させることにあったのです。
このケースは、理論が先走っていた「ナカラ・ファンド(Nacala Corridor Fund)」の失敗も説明してくれます。このファンドはモザンビーク北部の外国企業と小規模農家とG8ニューアライアンスとの間に複数の農業関連プロジェクトを生み出すはずでした。しかし、これは実現しませんでした。これらの両ケースは、アフリカの農民のアグリビジネスの計画を押し付けようとして失敗したといえます。
多くの取引の失敗のもう一つの要因としては、企業の無能さを指摘できます。

プロジェクトの背後にいるビジネスマン(イエスマン)は、農業に関する経験がほとんどなく、農地を取得した地域に関する知識がほとんどありません。エチオピアでのカルチュリの農地取引は、象徴的な事例の1つです(カルチュリの箱:未知の振り子を参照)。

また、私有地で富を築いたアメリカのビジネスマンであるカルバン・バージェスは、ケニアとその後のドミニオン農場と呼ばれるナイジェリアでの大規模な米農業努力でひどく失敗しました。サウジアラビア王子の支援を受けて、西アフリカの70万ヘクタールの土地を米農園に変えるはずのForas 7x7プログラムや、ケニアのArafcoサトウキビプロジェクトなど、サウジアラビアの事業グループから資金提供を受けたいくつかの大手ベンチャーも失敗に終わっています。 これらは現在ケニアの汚職防止委員会が調査中です。

インドのIT億万長者Sivasankaranがパプアニューギニアから西アフリカにかけて数年間に蓄積した油ヤシの植林プランテーション帝国もあります。2014年8月にセイシェルで破産申請して以来、50万haを超える彼のプランテーション・プロジェクトはすべて停滞しています。[9]

失敗した農地取引の増加を説明する際に見過ごすことのできない決定的に重要な要素は、それらに対する抵抗運動です。 地方の抵抗運動は、多くの土地取引が停止、失敗、修正される要因となりました。これは多くのケースにおいて確かなことであり、社会で広く認識されるべきことです。 次の例があげられます。

・カメルーンでは、国際団体の支援を受けている地域の団体やNGOからの激しい抵抗運動のために、Heraklesの土地譲渡は元の規模の1/4に縮小されました。セネガルでは、国際的な同盟国による研究に支えられた地方レベルの持続的な圧力は、いまだ進行中のSenhuileプロジェクトを失速させ、極端に縮小させる要因となりました。 [10]
・モザンビーク[MOユ1] では、日本とブラジルの市民社会支援を受けた農民団体からの強い反発が、プロサバンナという三角協力事業を停滞させ、外国投資コンポーネントである「ナカラ・ファンド」を失敗に追い込みました。
・アルゼンチンでは、大きな中国の農業グループであるBeidahuangがリオ・ネグロに320,000ヘクタールの取引を失敗に追い込んだ大規模な社会的反対運動がありました。
・以上のケースは、マダガスカルで起きた130万haに及ぶ土地収奪を画策していたDaewoo氏に対して起きた反対運動に酷似しています。
・最近では、ドデールの人びとの抵抗によって、セネガルのAfripartnersプロジェクトが中止されました。
・G8ニューアライアンスが土地収奪を生じさせるリスクがあるとして、フランス政府をアライアンスから脱退させたフランスNGOやアフリカ内部の協力者からの大きな圧力がありました。・大規模なNGOの運動は、カンボジアの砂糖生産者Mitr PholやコロンビアのCargillを取引から撤退させるのに成功しました。
・一方で、持続的なコミュニティ組織化はDominion Farmsをケニアから撤退させること要因となりました。
・マリの民衆運動のリーダーたちは、地域住民の反対によって土地収奪自体は失敗していないが、失敗に終わったマリビヤプロジェクトなどの土地取引のケースをあげ、これらのケースが国内の強力な社会的勢力である抵抗運動を加速させ、 国土法改訂にまで影響するようになったと指摘しました。

失敗に終った取引からの教訓

その他の土地取引を中止させるためにも、このように失敗に終わった取引からなにが学べるでしょうか。

非常に多くの農地取引が失敗しているということは、政府が投資家を適切に審査していないという問題を浮き彫りにしています。アグリビジネスに従事する投資家の能力に関する虚偽情報の申告を含む詐欺が横行しています。

また、今日では、すべての企業が責任ある投資の基準を設けていると主張していますが、農場を買収した企業が社内基準を頻繁に破っているため、これは意味を成していない状態にあります。 [11]つまり、受け入れ国は、投資家の責任規範と土地を実際に耕作するための必要要件をこれまで以上に重要視しなくてはいけないということです。ただし、責任規範といっても、多くの場合、投資家に問題がないことをインターネットで確認する以上のことは行われないという問題が生じています。一方で、市民社会グループやジャーナリストは、関連当局よりも土地取引に関わる汚職を摘発するために多くの活動をしています。
このような事態はオーストラリア、フランス、アメリカ、そしてカナダなど、世界中の至る所で散見される問題です。外国企業は抜け目なく、多くの場合秘密裏に農地を獲得しています。
我々は、この失敗した取引の証拠を、外国企業や国内企業の農地取得に関するモラトリアム、禁止、またはより厳しく規制するために用いる必要があります。しかし、これは簡単な作業ではありません。 いくつかの政府は、エチオピア、パプアニューギニア、カンボジアなど多数の失敗した取引や大規模な反対や激しい紛争に直面しているにも関わらず、土地投資政策の方針転換に対して難色を示しています(*国策としての土地収奪の失敗に関する欄を参照) 。

もう一つ留意しておく必要のある重要なことは、企業とその投資家に責任を負わせる必要があるということです。

企業や政府は、雇用、学校、保健医療などを見返りに、土地を放棄するようにコミュニティに約束させています。しかし、プロジェクトが崩壊しその約束が履行されないとなれば、コミュニティは土地を取り戻すことができないままに放置され、 彼らが本来受け取るはずであった見返りも受け取ることができなくなってしまします。

シエラレオネのアドラックスの例は明確な例ですが、他にもこのような例はたくさんあります(*Addax欄を参照)。

Addaxプロジェクトとの闘いに携わるいくつかの市民グループは、投資家が土地所有権に関する国際金融公社の実施基準や国連食糧安全保障会議の自主的ガイドラインなど、またはその実施基準へのコミットメントを表明したり、それを遵守していることを証明するだけでは不十分であると主張しています。重要な「出口戦略」の一環として、失敗の可能性を念頭にした実質的な資金調達が必要であると彼らは述べています。 もちろん、資金が問題の本質ではありませんが、プロジェクトが原因で状況が悪化してしまったコミュニティのニーズを無視することはできません。これは現実に起きていることです。 しかし、おそらくAddaxのケースで明示されたより大きな問題は、最終的に誰も責任を負わなかったという点です。そもそも、プロジェクトが失敗に終わった結果生じた状況を改善するための、Addaxまたは開発金融機関のいずれかが履行すべき責任の所在が不明瞭でした。
これは到底受け入れることができません。 私たちはプロジェクトが失敗した場合に投資家(公的・私的問わず)に法的な責任を負わせる必要があります。しかし、そのような救済策は、プロジェクトが失敗したときに二国間または多国間の貿易および投資条約の規定に基づいて政府を訴えることができる企業のみが有しています(*ISDSのボックスを参照)。

これは今すぐに改善されなくてはいけない不自然かつ根本的に不公平な状況です。
しかし、おそらく最も重要なメッセージは、これらの農地取引と他の農地取引が最初に起こるべきではないということです。アグリビジネスへの扉を開くのではなく、地域社会による食の生産を支援するための政策やイニシアチブへの投資が必要不可欠です。
プロジェクトが失敗に終った時

プロジェクトが失敗に終わった際に私たちはなにをすればいいのでしょうか。
すでに強調したように、農地取引が失敗した場合、その土地は必ずしもコミュニティに戻ってくるとは限りません。 取引が取り消されたり放棄されたりするとすぐに、投資家が来る前にそこにいた人びとに土地が返還されると仮定するのは間違いです。このような土地の返還はめったに起こらず、一般的な農地投資の全体的な問題の大半を占めます。
多くの場合、最初に土地取引を行おうとした企業はしばしば現地コミュニティに関する情報を引き継ぐことなく別企業にすり替わります。最初の企業がコミュニティと交わした契約を尊重することを拒む可能性があり、現地コミュニティにとってさらに好ましくない企業である可能性があります。
また、元の企業は利権を新しい企業に再配当または売却することもできます。 あるケースでは、州が他の用途のために土地を取り戻したものの、 企業は一時的に姿を消しただけで、プロジェクトを再開するのに最適なタイミングを待っているということもありました。
どんな場合でも、失敗した農地取引の余波は、通常、コミュニティにとって壊滅的状況をもたらします。人びとが土地の一部を取り戻したとしても、これらの土地はおそらく森林伐採され、土地が枯渇してしまい先祖代々受け継がれてきた水源はもはやなくなってしまう可能性があります。
このような状況は一度彼らが確保した食料や生活必需品したにも関わらず、農業、狩猟そして栽培など全てを台無しにしてしまいます。 プロジェクトと闘った地域社会の人びととそれを受け入れた人びとの間には、社会的な緊張が長引いているかもしれません。
コミュニティはプロジェクトや最初の投資家との闘っている際に、国内および国際的な支援ネットワークがなく、彼ら自身が孤立していることに気づくことがあります。農地取引の失敗は、住民にとって安心できる状況ではありません。 プロジェクトに反対する団体同士が連携するために、活動を強化し、次のステップに進む必要があります。影響を受けた地域社会を支援して土地を返還し、適切な条件に回復させることに焦点を当てる必要があるのです。
また、土地買収業者とその財政支援者は損害賠償責任を負う必要があり、これにはクリエイティブな戦略と、国内外の同盟国からの継続的な支援が必要です。土地取引を停止したコミュニティのリーダーは、他のコミュニティと共有する必要のある貴重な経験を持っているということを認識することも重要です。
これらの経験豊かなリーダーは、国や地域レベルでの土地収奪に反対する動きに参加するよう奨励され、支援されるべきです。

コミュニティ間の意識の高まりとより強固な結束は、今後の土地奪取に対する最も重要な防御になるからです。

翻訳者:舩田クラーセンさやか/ 芦田雄太

*この翻訳は地球環境基金助成事業(GRAIN:西・中央アフリカにおける油ヤシ・プランテーション産業拡大に対応するためのコミュニティ能力強化と地域プラットフォームの形成)によって準備されました。
 

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