Earth matters (in Japanese)

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Autor(a): GRAIN
Fecha: 10 octubre 2009
Traducciones: Français, Español, y English
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GRAIN | 10 octubre 2009 | Seedling - October 2009

Earth matters - Tackling the climate crisis from the ground up(要旨)

世界の食料システムと気候危機

(http://www.arsvi.com/i/2-food_climate02.htm)

グレイン

一部の物事は500年前のダビンチの時代からそれほど変わっていません。多くの人にとって、土壌とは泥と土埃の混在物でしかありません。しかし、実際の土 壌は地球で最も素晴らしい生きた生態系の1つなのです。数百万の植物、バクテリア、菌類、昆虫やその他の生命体などのほとんどは人間の裸眼では見えません が、常に、有機生命物質の創生、構成、そして分解の進化プロセスの中にあります。これらは、また、食物を栽培したい人にとっては避けては通れない出発点で もあります。

土壌には、有機物質の形態を中心にして膨大な量の炭素が含まれています。地球規模で、土壌には陸生植物に含まれている2倍以上のCO2が保有されていま す。しかし、過去1世紀の工業化農業の勃興により、化学肥料への依存を通じて、土壌肥沃度の全般的な軽視と土壌からの有機物の大規模な喪失が誘発されてい ます。この喪失有機物質の多くは、大気中の二酸化炭素(CO2)の形、つまり最も影響力のある温室効果ガスとなってしまったのです。

工業化農業の土壌処理方法は現在の気候危機を誘発する主たる要因となっています。しかし、土壌は、また、一般的に認知されている程度よりもはるかに大きい 解決策の一部でもあり得るのです。我々の計算によれば、世界の農業土壌を工業化農業のせいで失ってきた有機物をなんとか元に戻すことができれば、大気中の 現在の過剰なCO2排出の少なくとも3分の1が捕捉されることになります。我々が、もし、これの実行を開始して、土壌再構築の実施を継続した場合には、約 50年後には、大気中の余分なCO2の3分の2が捕捉されることになります。この過程において、我々はより健全で生産性の高い土壌を構築していることにな ると同時に、もう1方の気候変動ガスの強力な発生元でもある化学肥料を使用しなくても済むようになるのです。

「ヴィアカンペシナ(農民の道)」は、小規模農業を中心とする農業が農業生態系生産方法を採用すると同時に地元市場を志向することで、この地球を冷却してなおかつ全住民を養えるものと主張しています(Box1参照)。彼らが正しいという訳は、大部分が土壌内に存在します。


Box1:中小規模の持続可能な農家が地球を冷します(1)

「ヴィアカンペシナ(農民の道)」は、現在の危機へのソリューションは、正義と団結と健全な地元社会に基づく生産、貿易及び消費の様式を開発しつつある組 織化された社会集団から生み出されなくてはならないと考えています。技術的な修正計画では、現在のグローバルな環境や社会的災害は解決されないでしょう。 持続可能な小規模農業は労働力集約的ですがほとんどの燃料は必要としませんから、地球の冷却に貢献することができます。

世界中で、我々は小規模な持続可能な家族農業経営を実践し守ると同時に食糧主権を求めます。食糧主権は生態学的に健全で、持続可能な方法で生産される文化 的に適切な食糧に対する人々の権利であると同時に、この彼らの権利は独自の食と農の体系を定める権利でもあります。これは、人々を、食糧を生産、流通、そ して消費する人々の願望とニーズを市場や企業の要求ではなく、食糧体系や政策の中心に置くものです。食糧主権は、地元および国の経済や市場に優先順を与え るとともに、農民や家族農家主導型農業、職人風漁業、牧畜民主導の放牧、ならびに環境、社会ならびに経済の持続性に基づいた食糧生産、流通、消費に力を与 えるものであります。

私たちは、地元、国内および国際的な意思決定者に緊急に次のことを要求します:

農業関連企業の完全解体:彼らは小規模生産者の土地を収奪しジャンクフードを生産し、環境災害を新たにもたらしています。

真の農業改革計画によって支援される小規模な持続可能な農業による工業化された農業と家畜生産の置換

健全かつ持続可能なエネルギー政策の推進:これには農場に関するよりも少ないエネルギー消費、現在のアグロ燃料生産の派手な推進に代わって太陽光やバイオエネルギーによる発電が含まれる。

持続可能な農業と地元食糧消費を支える地元、国内及び国際レベルでの農業、貿易政策の実施、これには格安市場食品のダンピングにつながる補助金の禁止が含まれます。

(1)気候変動に関するヴィアカンペシナの声明文から抜粋
http://www.viacampesina.org/main_en/index.php?option=com_content&task=view&id=457&Itemid=37 本文へ戻る

ヴィアカンペシナ(スペイン語からきたもので農民の道)とは、アジア、アフリカ、アメリカ、および欧州出身の中小規模生産者の農民、農事労働者、田園女 性、ならびに土着地元社会組織を束ねる「国際的運動」として説明されています。これらは100を越える組織の連合体であって、家族農場を中心とした持続可 能農業を唱道すると同時に、「食糧主権」という言葉を最初に生み出した集団です。食糧主権とは食糧を自分たち自身の土地で食糧を生産する権利のことを指し ます。その中でも最も知られるスポークスマンはフランス農民のジョゼボヴェです。この組織は1993年にラファエルアレグリアによって創設されるととも に、その当初の本部はホンジュラスのテグチガルパにおかれました。本部事務所は、現在、インドネシアのジャカルタにあります。ヘンリーサラジがその国際活 動秘書です。


生きた生態系としての土壌

土壌は地球の地表の90%以上をカバーする薄い層であり、多くの人々が考えることと違って、生きたダイナミックな生態系なのです。

健全な土壌は死んで腐敗した物質(およびミネラル)の植物栄養素への変換を含む多くの重要な機能を果たす微細で多数の有機物で溢れています。様々な土壌生 物が様々な有機質下層土の餌となります。土埃類とこの生きた系とを区別するのは、栄養素を保持しつつ、ゆっくりと植物の成長に必要な栄養素を提供できる点 にあります。この系は水分を蓄えてこれを川や湖にあるいは植物の根の微細な環境にゆっくりと放出することができるため、河川が流れられるだけでなく、植物 は降雨後の長期にわたり水分を吸収できるのです。土壌によってこれらのプロセスが行えなかったとしたならば、我々の知る地球上の生命は存在しなかったこと でしょう。

土壌作用を構成するカギとなる構成要素は土壌有機物質(SOM)として知られています。これは植物や家畜を構成する物質の分解から生じた物質の混合物で す。これには真菌、細菌、昆虫やその他の生物から排泄される物質が含まれます。糞尿や死んだ生物は分解されるにつれて、植物に取り込まれることができ、自 分の成長と発育に利用される栄養素を徐々に放出します。すべてのこれらの物質は土壌中に混ざってしまうとき、新たな特性を土壌に与える新たな分子類を形成 します。これらの粉塵として、土壌有機物質の分子類は土埃分子の100倍までの水分を吸収し保持した後、同じ比率の栄養素を植物に放出することができます[1]。  有機物質もまた土壌粒子を一緒に保つ結合分子をもたらして、浸食から土壌を保護してより多孔質でかつ締まりのより緩いものにします。これらの特性は、土 壌が雨を吸収すると同時に、徐々にこれを湖沼、河川、植物に放出することを可能にします。これらはまた植物の根を成長させることもできます。植物が成長す るにつれて、切り株がより多く広がって土壌に留まるとともに、より多くの有機物が形成される結果、土壌中に有機物質が蓄積される連続したサイクルが生まれ ます。このプロセスは、何百万年もの間行われてきていると同時に、土壌中の有機物の蓄積は、何百万年も前の大気中におけるCO2の量を低下させる重要な要 因となったため、現在の地球上の生命形態の出現を可能にしたのです。

有機物のほとんどは最上層で発見され、この層が最も肥沃な土壌なのです。最上層にあるので、浸食されやすく植物林冠によって保護される必要があり、この林 冠が順次追加の有機物の永続的な源となります。こうして植物の生命や土壌の肥沃度により、相互にプロセスが強化されてきて両者間の橋渡しが行われてきまし た。しかし、有機物質は土壌に住んでいる細菌、真菌、小さな昆虫や他の生物の餌でもあります。

これらは糞尿や死んだ組織を栄養や上記の驚くべき物質に変えるものですが、これらは土壌中において有機物質を分解するものでもあります。そのため有機物は 常に補充される必要がありますが、補充されない場合には、徐々に土壌から消えていきます。土壌中の微生物や他の生物が有機物を分解すると、このプロセスで 自らエネルギーを生成すると同時に、ミネラルやCO2を放出します。分解有機物1キロ当たり、1.5キロのCO2が大気中に放出されます。

世界中の農村の人々は土壌を深く理解しています。彼らは、経験を通して土壌には世話が必要で、育て、餌を与えかつ休養させる必要があるということを学びま した。伝統的な農業に関する多くの共通な慣行では、この知識が反映されています。肥料、作物残渣や堆肥の利用は、土壌を養いかつ有機物を活気づけます。 ローテーション体系の中で一部の土地を耕作しないでおくと(休耕地)、特に、自然発生の野生植物が活気づく(保護休耕地)場合には、土壌は休息できるた め、分解プロセスは正常に行われます。耕作制限、テラスやマルチング、その他の保存慣行により土壌が浸食に対して守られて、有機物が洗い流されたり、吹き 飛ばされることはありません。森林植生は手づかずで、できるだけ変更あるいは擬態されないままであることが多いので、木々により土壌が浸食から保護される だけでなく追加の有機物がもたらされます。歴史上これらの慣行が忘れられるかあるいはなおざりにされてきた時代には、高価な代償を支払ってきました。これ は、中央アメリカのマヤ王国の消失の主な原因の1つであったようです。また、これは中国帝国における数多くの危機の背景であった可能性もありますが、米国 とカナダにおけるダストボールの主たる原因であったのは確かです。

農業の工業化と土壌有機物質の喪失

農業の工業化は、ヨーロッパや北米で始まり、その後に、それ以外の世界で起きた緑の革命においても繰り返され、化学肥料を使用して土壌肥沃度を維持、向上 ができるという前提に基づいていました。土壌中の有機物の重要性には殆ど注意が払われませんでした。農業の工業化や小規模農業への工業的技術基準の数十年 にわたる押しつけにより、土壌が有機物の新しい供給源を得ることやすでに土壌中に蓄えられた有機物が洗い流されたり、吹き飛ばされたりするのを防護するプ ロセスが確実に弱体化しました。当初は土壌中には有機物のストックが大量にあったため、有機物を活気づけないとか施肥の影響には気づくことはありませんで した。しかし、時間とともに、これらのストックは消耗すると同時に、その影響がより目に見えるようになり、世界の一部の地元では壊滅的な結果となりまし た。グローバルな視点から、産業革命前の空気と土壌の間の均衡は、空気中の炭素1トンにつき約2トンの炭素が土壌に存在したというものでありました。現在 の比率は下がって、外気中の1トンにつき土壌中には約1.7トンとなっています[2]

土壌有機物は%で評価されています。1%とは1キロの土壌中に、10グラムの有機物質があることを意味します。これは、土壌の深さに応じて、1ヘクタール 当たり20〜80万トンに相当することになります。肥沃度を確保するために必要な有機物の量は、その土壌の形成のされ方、その他の含まれる成分の種類、気 候条件などによって大きく異なります。しかし、これは、一般的に5%有機物が健全な土壌のために望ましい最小値ですが、一部の土壌については、有機物含有 量が30%を越える場合にしか最善の栽培条件には届きません。

広範にわたる研究によると、ヨーロッパやアメリカ合衆国の農地土壌は、表層の20〜50センチの有機物質のうち、平均して1〜2ポイントを失っています[3] 。  この数値は過小評価である可能性も大いにあります。多くの場合、比較のポイントは20世紀初頭における有機物質のレベルであるので、多くの土壌が、すで に、工業化のプロセスにさらされていた場合には、すでに早くも有機物を大量に失っていた可能性があります。アメリカ中西部の農地の一部土壌では、1950 年代には20%の炭素が含まれており、現在でも1〜2%の低下に過ぎません[4]。 チリ、アルゼンチン[5]、ブラジル[6]、南アフリカ[7]、スペイン[8]における研究では、10ポイントにのぼる喪失が報告されています。コロラド大学の研究者によって提供されたデータでは、耕作地中の有機物の喪失の世界平均は7%ポイントであることが示されています[9]



Box2:問題が増している工業肥料

土壌肥沃度が破壊してしまった大きな要因は、農業においては化学肥料の使用が1961年以来5倍を越える消費で全体的に巨大に膨れあがったことにありました(1)。図1は、窒素の1ヘクタール当たりの世界消費量の増加を追ったもので、1960年代から7倍に増加しています(2)。 しかし、この余分な窒素の多くは植物に到達しないまま地下水や空気になっています。窒素肥料は多く利用されるほどにその効果は減少します。図2は、全耕地 面積のほぼ3分の1をカバーしている4種類の作物です、そのトウモロコシ(モロコシ)、小麦、大豆、コメについての収量と窒素肥料消費量との関係が示され ています。これらすべてついての使用窒素キロ当たりの収量は、今日では、肥料の利用が世界中に拡大し始めた1961年当時の約3分の1となっています。

工業肥料の効率が常に減少していることは驚くにあたりません。土壌の専門家や農民は、昔から、化学肥料が有機物を破壊することで土壌の肥沃度が破壊されて いることを知っています。化学肥料を使用した場合、その膨大な量の水溶性栄養素が直ちに手に入ることになって、微生物の活動と繁殖が刺激されて急増しま す。その後、この増えた微生物の活動により有機物の分解速度が上がり、高速で消費されて、CO2が大気中に放出されます。肥料からの栄養分が乏しくなると ほとんどの微生物は死んで、有機物が減少した土壌が残ります。このプロセスは何十年も続いてきた上に耕起によってさらに強化されているので、土壌有機物質 は枯渇してしまいます。これがさらに悪化しているのは、化学肥料を奨励する同技術的手法により、作物残渣は土壌に戻されずに、廃棄されるかまたは焼却され なくてはならないものと決められているためです。

土壌は、有機物を失うにつれて、より硬く締まって水分の吸収がさらに減少して栄養分の保持能力が低下します。根の成長が低下し、栄養分の吸収能力も低下 し、栄養分はさらに容易に土壌から失われ、成長のための土壌水分の獲得が減少します。その結果、肥料からの栄養分の使用効果が少しずつ低下するだけでな く、この非効率性を克服するには、世界の動向が示すように施肥量を増やすことが唯一の方法になります。しかし、その使用の増加では問題はこじれるだけで、 土壌の非効率性と破壊は同じペースで続きます。有機農家は自分たちの収量が工業肥料の大量使用の数年後には急減してしまったため有機栽培に戻ったと云うの を耳にすることも珍しくありません。

工業肥料の問題はこれだけではありません。化学肥料によって提供される窒素の形態は容易に土壌中で変化して、窒素酸化物が大気中に放出されます。窒素酸化物は、CO2(3)の200倍も強い温室効果があり、温室効果ガスの40%以上がこの現在の農業慣行のせいで生じています。さらにまずいことには、窒素酸化物はオゾン層をも破壊します。

図1:増加する窒素施肥量:世界平均で1961年の8.6 kg/haから2006年4月には62.5キロ/ haに 図参照(4)

図2:1961年には、窒素施肥量1キロ当たりトウモロコシが226キロ取れたにもかかわらず、2006年にはたったの76キロであった。同様に、それぞ れ、米では、217キロから66キロ、大豆では131キロから36キロ、小麦では126キロから45キロの数字であった。 図参照(5)

(1)国際肥料産業協会(IFA)のウェブサイトを参照のこと http://www.fertilizer.org/ifa/Home-Page/STATISTICS 本文へ戻る

(2)IFA( 注1参照)およびFAO http://faostat.fao.org/default.aspxによって提供された統計に基づいてグレインが入手したデータ 本文へ戻る

(3)P.フォルスター 他による「大気成分の変化と放射強制力」、S.ソロモン他(編集者)による気候変動2007: 物理科学上の根拠、気候変動に関する政府間パネルの第4次評価報告書までの作業部会Iの貢献、ロンドン、ニューヨーク、ケンブリッジ大学出版、2007 年、p. 212 本文へ戻る

(4)IFAウェブサイト(注1参照)出典のデータ 本文へ戻る

(5)IFA( 注1参照)およびFAO(注2参照)によって提供された統計に基づきグレインが入手したデータ 本文へ戻る



気候推定

控えめな推定として、工業的農業を開始して以来、世界の土壌が、平均して、表層30センチの有機物質のうち1〜2ポイントを失ったと仮定しましょう。これ はおよそ1,500〜2,050億トンの有機物を喪失したことになります。もし我々がこの有機物を何とか土壌中に戻すことができたとするなら、我々は空気 中から2,200-3,300億トンのCO2を取り去ることができましょう。これは大気中の現在の過剰なCO2の30%に相当します。表1はそのデータを まとめたものです。

つまり、土壌有機物質の積極的な回復を図れば、地球を効果的に冷却することになると同時に、多くの土壌はこの例で採用される1〜2ポイントの回収率よりも多くの有機物質を貯蔵できて有利になるので、冷却の可能性は、これらの数字で示されるものよりもかなり高くなります。

有機物を土壌に戻すなんて本当にできるのでしょうか?

土壌有機物質を破壊した農業の工業化は1世紀以上続いてきました。しかし、グローバルなプロセスは実際には1960年代の「緑の革命」とともに始まったの です。そこで、問題はその影響を打ち消すのにどのくらい、例えば土壌が劣化してきた50年もかかるのだろうかという点であります。土壌有機物質が1ポイン トの回復することは、1ヘクタール当たり約30トンの有機物が土壌中に入力されていると同時にそのまま残ななくてはならないことを意味します。しかし、平 均的には、農業土壌に添加される有機物質のおよそ3分の2が土壌有機物によって分解されます(そして生ずるミネラルは作物に供給される)ので、永続的に土 壌有機物質を30トン添加するためにはヘクタール当たり全90トンの有機物が必要となります。これは早急には出来ない話であります。徐々なプロセスが必要 とされます。漸進的なプロセスが必要です。

世界各地の農家が土壌に組み込むことができる有機物の現実的な量は、どのくらいなのでしょうか? その答えは場所により、作付け体系によって、また生態系 によって大きく変動します。専ら年生の非多様化作物に依存する生産体系は年間1ヘクタールあたり0.5〜10トンの有機物をもたらすことができます。作付 け体系が多様化されるとともに、牧草地、緑肥が組み込まれる場合には、その量は単純に2倍あるいは3倍にすることが出来ます。もし家畜が追加されると、有 機物の量は必ずしも増加しないものの、牧草の耕作と緑肥が採算性と収益性のあるものになるでしょう。また、もし、木々や野生植物も作付け体系の一部として 管理される場合には、作物生産の増産ばかりでなく、有機物も追加して増産されます。土壌中の有機物が増加するにつれて、土壌の肥沃度は改善すると同時に、 より多くの有機物が入手できることになります。有機農業への変換を始める場合、多くの農家は年間1ヘクタールあたり10トンも組み込まなくても、数年後に は最終的に生産できるようになって1ヘクタール当たりの有機物は最大30トンにもなる場合もあります。

表1:土壌有機物質(SOM)の構築によるCO2の捕捉量
大気中のC02(1) 2兆8,675億トン
大気中の過剰なCO2(2) 7,178億トン
世界の農業用土地(3) 50億ヘクタール
世界の耕地面積(4) 18億ヘクタール
報告された典型的な耕地中の土壌有機物質喪失 2ポイント
報告された典型的な大草原および非耕作地における土壌有機物質喪失 1ポイント
土壌から失われる有機物質の量 1,500-2,050億トン
これらの喪失が回復された場合に隔離されるであろうCO2の量 2,200-3,000億トン
(1)CO2情報解析センターを参照のこと。 http://cdiac.ornl.gov/pns/graphics/c_cycle.htm
(2)経時濃度変化に基づく計算。
(3)FAOSTATからの情報 http://faostat.fao.org/site/377/default.aspx#ancor
(4)同上。
出典:グレインによる計算


Box3:NPK(窒素、リン、カリ)の考え方-貧弱な土壌、貧弱な食糧

ほとんどの化学肥料によりせいぜいほんの一握りしか補われないのに、植物は健全な土壌から70から80種類ものミネラルを吸収することを今では皆、知って います。19世紀半ばに、ドイツの化学者ユストゥスフォンリービッヒが、その成長のための不可欠な要素をよく知るために植物の組成の分析実験を行いまし た。彼の原始的な機器では、化学記号のNPKとして知られていた窒素、リン、カリウムの3つの要素しか特定されませんでした。ところが、フォンリービッヒ は、後になって、植物中の他の多くのミネラルの存在を認め、彼の実験は、利益のあがる農薬産業のための基礎を築き、この産業が農家に奇跡的な増分収量の約 束をしてNPK肥料を販売しています。NPK肥料は、確かに、農業に革命をもたらしましたが、土壌品質と私たちの食糧の悲劇的な悪化を犠牲にしたものでし た。

1992年のリオ地球サミットの公式報告書は、「世界各地の農場や牧草地の土壌のミネラル値の継続的な下落には深刻な懸念がある。」と結論づけています。 この報告書は、過去100年間にわたり、農業土壌の平均ミネラルレベルが、ヨーロッパで72%、アジアで76%、北米で85%、世界中で低下したことを示 すデータに基づいています。その責めのほとんどは土壌の肥沃度を促進する自然な方法にはなく、人工的な化学肥料の大量使用にあります。NPKの考え方が起 因となった直接的な消耗はさておき、化学肥料は、また、土壌を酸性化する傾向にあることによって、土壌のミネラルを植物が使用できる化学形態に変換する役 割を果たしている多くの土壌生物を殺してしまいます。殺虫剤や除草剤も、植物の根(菌根と呼ばれる)と共生して住んでいる土壌菌の一部の種類を殺しますの で植物によるミネラルの吸収を減らしてしまいます。 菌根共生により、植物に、植物の根だけでできるよりもはるかに大きなミネラル抽出系に取り入る力が与えられます。

この最終結果のすべては、私達が食べる食べ物のほとんどはミネラル不足であるということです。 1927年、ロンドン大学キングスカレッジの研究者達は食品の栄養含有量を調査し始めました。それ以来、彼らの分析は定期的な間隔で繰り返されて、これに より私たちの食べ物の組成は、過去1世紀にわたる変化度合に関する大変貴重な姿が私たちに示されています。表では驚くべき結果が要約されています。つま り、私たちの食べ物では20〜60%のミネラルが失われていたのです。

 

1940年から1991年にかけた英国における果物や野菜の平均ミネラル含有量の低下 ミネラル 野菜 フルーツ
ナトリウム -49% -29%
カリウム -16% -19%
マグネシウム -24% -16%
カルシウム -46% -16%
-27% -24%
-76% -20%
亜鉛 -59% -27%

2006年に公刊された新たな研究によれば、動物性食品でも同様の減少が見られます。1940年当時と比べ2002年の測定では、牛乳に含まれている鉄分 は減少しており、またパルメザン・チーズ中のカルシウムとマグネシウムはそれぞれ70%の減少、そして乳製品中の銅はなんと90%も減少しています。

From: Marin Hum, “Soil mineral depletion”, in Optimum nutrition, Vol. 19, No. 3, Autumn 2006.



したがって、意欲的な農業政策やプログラムが作られて、土壌中への有機物の広範な取り込みを促進する場合には、最初の目標は多少控えめにしなくてはならな いにしても、徐々にもっと野心的な目標を設定することができます。表2では、有機物の土壌中への混入の仕方の例が示されています。

この例は完全に実現可能です。世界の今日の農業は、毎年、ヘクタール当たり少なくとも2トンの利用可能な有機物を生成しています。年生作物だけで毎年1ヘクタールあたり1トン以上[10]、を産出すると同時に、都市性の有機性廃棄物や廃水リサイクルにより1ヘクタールあたり約0.2トンを追加できます[11]。  土壌有機物質の回収が農業政策の中心的な目標となれば、世界全体で年間1ヘクタール当たり平均1.5トンを当初目標として設定することが完全に可能にな ると同時に妥当なものになります。新しいシナリオでは、多様化栽培体系、作物と家畜間のより良い生産一体化、木々や野生植物の取り込みの増加などの技法を 採用した手法の変更が必要になります。このような多様性の増加により、順次、生産力が高まるとともに、有機物質の混入により徐々に土壌の肥沃度が向上し、 より高い生産性の好循環が生み出され有機物の入手性はさらに高まるでしょう。土壌の保水能力が高まることにより、過剰な降雨量は少なくなり、あまり強烈な 洪水や干ばつにもならないことになります。土壌浸食の問題も少なくなります。酸性やアルカリ土壌は徐々に減り、熱帯、乾燥した土壌中で大きな問題となって いる毒性は低下するかあるいは無くなります。また、土壌生物学的活性の増加により害虫や病気から植物が保護されます。それぞれのこれらの効果は高い生産性 を示すため、土壌中により多くの有機物が入手可能となるため、年が経るにつれて土壌有機物質取り込みの目標をより高くすることができるようになります。こ の過程でより多くの食物が生産されることになるでしょう。

しかし、非常に控えめな最初の目標といえども成果ははるか遠くにあります。表2に示すように、プロセスは、最初の10年間は1.5トンの年間有機物の混入から始まり、37.5億トンのCO2が毎年捕獲されることなります。これは現在の年間人為排出量総量のおよそ9%です[12]。 温室効果ガス(GHGs)の削減の2つの異なる形態が同時に発生するでしょう。まず、すべての現在の世界の全肥料生産量以上の栄養素が世界の農業土壌内に捕捉されるでしょう[13]。   現在の生産と化学肥料の使用の排除により、窒素酸化物排出量の削減(全温室効果ガス排出量の約8%に相当すると同時に、森林伐採に次いで、農業は温室効果 に対する寄与がはるかに最大となる)と世界の肥料の生産量と輸送との両方の削減によって、さらに多くの温室効果ガス排出量を削減し、これにより世界の温室 効果ガス排出量の1%以上を受けもつ可能性があります[14] 。 第二には、有機性廃棄物が農業土壌に戻されたならば、埋立地や廃水からのメタンやCO2(現在の全排出量の3.6%に相当)[15] 。を大幅に削減することができます。総計では、このような控えめな出発点に立っても年間約20%もの地球温暖化ガス排出量を削減する可能性があります。

我々は、最初の10年間について話しています。表2に示しますが、仮に我々が徐々に自分たちの農業土壌への有機物の再取り込みを増やすことが出来たとすれ ば、50年以内には土壌中の有機物の役割を2ポイント増やせるでしょう。この時間は、それを減らすためにかかった時間とほぼ同じです。この過程で、現在の 大気中の過剰なCO2の3分の2以上の4,500億トンのCO2を捕獲しているでしょう!

これは実現可能なもののそれには適切な政策が必要です。

気候の危機には、多くの広範な社会的経済的な変更を伴う政治的な対応が必要です。にもかかわらず、土壌有機物質の回復がたとえ実現可能であって地球を冷却 するために有益な方法であるとしても、私たちの生産と消費の基本的なパターンを変更しない限り、気候変化は加速しないのです。土壌に有機物を戻す処理は、 土地の集中化の増加と食糧体系の均一化に向かっている現在の傾向が続いていては不可能です。土壌へ毎年70億トン以上もの有機物を返す途方もない目標は、 共同で何百万もの農民や農村社会が共同して実施される場合にのみ実現可能なものです。これには、何よりも、まず世界の農民の大半の小規模農家に土地へのア クセス権を与えると同時に、彼らが必要な作物のローテーション、休耕地の保護や牧草地の形成を行うことを経済的および生物学的に可能にする基本的な農業改 革が必要となります。また、種子独占の促進や民営化促進といった法律や企業を保護するものの、伝統的な食糧体系を無視する規制などの農民を土地から追い出 す現在の反農民政策の解体も必要です。高度に集中した工業化された家畜生産の世界的な成長は、数百万ものメタンや亜酸化窒素を空気中に吐き出す糞尿の山や とスラリーの湖を作り出しており、作物生産と統合化された分散型の牧畜業に転換され置き換えられなくてはなりません。我々は、この苗木誌特集号における他 の記事でも示したように、気候変動の中心的な促進要因の1つである現在の国際的な食糧体系は、完全なオーバーホールそのものを必要とします。もしこれが実 行されると、気候の危機には土壌という解決策があることになります。

表2:世界の農地土壌中への有機物質(SOM)の漸進的な混入の影響 年数 1〜10 11〜20 21〜30 31〜40 41〜50
混入有機物のトン数(1ヘクタール当たり年間当たり) 1.5 3 4 4.5 5
期間末までの世界の農地に混入された総有機物質(累積値、億トン) 750 2,250 4,250 6,500 9,000
期間末における土壌中有機物の平均増加(%ポイント) 0.15 0.50 0.94 1.4 2.0
年間当たり総捕捉CO2(億トン) 37.5 75 100 112.5 125
期間全体総捕捉CO2(累積値、億トン) 37.5 112.5 212.5 325 450
出典:グレインによる計算


Box4:有機農法を基にした気候変動ソリューション

50年間以上、米国、ペンシルバニアのロデイル研究所は、有機農法の研究を実施しています。ほぼ30年にわたるロデイル研究所の土壌炭素データにより、再 生有機農業慣行を含めグローバルに陸生経営を改善することが、 CO2排出量を緩和するために最も効果的に採用できる戦略であることが明確に示されています。以下はその印象に残る結論の一部です(1)

1990年代には、ロデイル研究所の「堆肥の有効利用試行(CUT)」を元にした結果である堆肥や糞尿の利用と合成化学肥料の使用とを比較した10年研究 では、有機系での作物ローテーションを伴った堆肥肥料の使用により最大2,000ポンド/エーカー(約140トン/ha)/年までの炭素を隔離する結果と なりえることが示されました。これとは対照的に、化学肥料に頼る標準的な耕作地では、年間1エーカー当たり約300ポンド(約21トン/ha)のCO2が 失われました。最大2,000ポンド/エーカー(約140トン/ha)/年までの炭素の貯蔵あるいは隔離により、7,000ポンド(約490トン)以上の CO2が空気から取りこまれて、その耕作地の土壌に閉じ込められたことになります。

「2006年の化石燃料の燃焼からのアメリカのCO2排出量はほぼ65億トンと推定されました。仮に7,000 ポンド/CO2/エーカー/年の隔離率がアメリカ合衆国のすべての農作物栽培好適地、4億3千4百万エーカーで達成されたとするなら、CO2のほぼ16億 トンが年間に隔離されて、国全体の化石燃料の排出量の4分の1近くが軽減されることになります。」

「農業的な炭素隔離には地球温暖化の影響を十分に緩和する可能性があります。生物学に基づく再生力のある慣行を利用すると、この劇的なメリットが農家の収 量あるいは利益を減少させることなく得られます。これらの複数の研究活動により、たとえ気候や土壌のタイプにより隔離能力に影響があるとしても、地球上の 35億エーカーの耕作可能面積で実践されれば、実用的な有機農業により現在のCO2排出量の約40%を隔離できることが確認されています。」

(1)投稿者:ティム・J・ラサール及びポール・ヘッパーリ、 再生有機農法:地球温暖化へのソリューション、2008年、ロデイル研究所 http://www.rodaleinstitute.org/files/Rodale_Research_Paper-07_30_08.pdf 本文へ戻る



Box5:活動状態にある菌である有機物の構築

「研究者達は土壌炭素隔離が行われるメカニズムに肉付けしつつあります。最も重要な知見の1つは、増加した土壌炭素レベルと非常に多数のアーバスキュラー 菌根菌数との間にある高い相関関係です。これらの菌類は有機物の腐敗を遅らせるために役立ちます。デビッドダウドによって指導された米農務省農業研究サー ビス(ARS)による共同研究である当営農体系の試行から始まって、アーバスキュラー菌根菌の生物学的支援系が有機的な管理体系の中で、合成肥料や農薬に 依存する土壌中よりもさらに広がり、多様になったことが分かりました。これらの菌は粘土とミネラルと有機物を集約することで有機物を維持するように作用し ます。土壌集合体中では、炭素はその自由な形態に比べて、分解に対する高い耐性があるため、蓄積される可能性が高いのです。これらの知見により、アーバス キュラー菌根菌が強力な接着剤に似たグロマリンと呼ばれる土壌粒子の凝集の増加を刺激する物質を生成することが示されています。これにより土壌の炭素保持 能力が増加することになります(1)。」

(1)投稿者:ティム・J・ラサールとポール・ヘッパリー、 再生有機農法:地球温暖化へのソリューション、ロデイル研究所、2008年 http://www.rodaleinstitute.org/files/Rodale_Research_Paper-07_30_08.pdf 本文へ戻る



[1] C.C.ミッチェル並びにJ.W.エベレスト、「土壌試験並びに植物分析"、南部地元概要報告書、オーバーン大学農業経済学&土壌学部、http://tinyurl.com/lbg6st 本文へ戻る

[2] Y.G. プザチェンコ等、「世界の土壌中の有機物質の蓄積評価:方法論と結果」、 ユーラシア土壌学会誌、第39巻、第12号、2006年、 1284〜1296頁 http://tinyurl.com/npd648 本文へ戻る

[3] R.ラル及びJ.M.キンブル、「米国の農耕地中の土壌炭素集積」 http://tinyurl.com/muurmc P.ベラミー「英国の土壌炭素喪失は気候変動のせいか?」、クランフィールド大学、天然資源部 http://tinyurl.com/l9zcjx 本文へ戻る

[4] ティム・J・ラサールとポール・ヘッパリー、「再生有機農法:地球温暖化への解決策」、ロデイル研究所、2008年 http://tinyurl.com/mle5nq 本文へ戻る

[5] I・ガスパリ、R.グラウ、E. マンジー、「1900年と2005年の間の北アルゼンチン熱帯林における森林伐採からの炭素蓄積と排出」、概要がhttp://tinyurl.com/ljrjyoか ら入手可能です。 J. ガランティーニ、 「Materia Organica y Nutrientes en Suelos del Sur Bonaerense, Relacion con textura y los sistemas de produccion」 http://tinyurl.com/nkjhfh 本文へ戻る

[6] カルロス C. セリー、「ブラジルにおける土地利用の変化による排出」EU土壌会議と気候変動、2008年6月12日」 http://tinyurl.com/m3dmyz 本文へ戻る

[7] C.S. ドミニー、R.J.ヘインズ、R.ヴァンアントワープ、「2種の対照的土壌に関する長期的なサトウキビ生産下での有機物質土壌の喪失と関連土壌特性」、 生物学と土壌肥沃度誌、第36巻、第5号2002年11月、 56〜350頁 http://tinyurl.com/kp9gavから概要入手可能 本文へ戻る

[8] E.ノアイユとA.デベイガ、「Perdida de Fertilidad de un Suelo de Uso Agricola」、アルゼンチン、Instituto de Suelos http://tinyurl.com/nc92clから概要が入手可能 本文へ戻る

[9] K. Paustian、J.シックス、E.T.エリオットおよびH.W.ハント、「農業土壌からのCO2排出量削減のための管理選択肢」 生物地球化学誌、第48巻、1号、2000年、1月、 63〜147頁 http://tinyurl.com/nlzekfで入手可能 本文へ戻る

[10] 年間の世界穀物生産量に基づくグレインの計算、バトンホルムニールセン(http://tinyurl.com/l4nqra)並びに、米国エネルギー省のオークリッジ国立研究所(http://tinyurl.com/t4x96)によって提供された数値データを使用して取得された数値は、一年生作物残留量の少なくとも2倍の量です。同じ数値データは、http://tinyurl.com/38mrkwのミシガン大学によって提供されるデータを採用しても到達できます。 本文へ戻る

[11] K.A. ボマート、T.ヘルツォークならびにJ.パーシング、「数値ナビゲーション:温室効果ガスデータと国際気候政策」、世界資源研究所 http://tinyurl.com/m5e7kbによって提供される数値の基づく計算 本文へ戻る

[12] 温室効果ガスの情報 第4号 http://tinyurl.com/m4apxzによって提供される数字に基づく計算 本文へ戻る

[13] 有機物質における、窒素:1.2〜1.8%、70%効率、リン:0.5〜1.5%、90%効率、カリウム:1.0〜2.5%、90%効率の栄養素内容と回復効率に基づく計算 本文へ戻る

[14] 「数値ナビゲーション:温室効果ガスデータとの国際気候政策」、世界資源研究所 http://tinyurl.com/m5e7kbを参照のこと 本文へ戻る

[15] 同上 http://tinyurl.com/lfrcx4も参照のこと 本文へ戻る



*このファイルは文部科学省科学研究費補助金を受けてなされている研究(基盤(B)・課題番号16330111 2004.4〜2008.3)の成果/のための資料の一部でもあります。
 http://www.ritsumei.ac.jp/acd/gr/gsce/p1/2004t.htm

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